Mivital AG CPHI大賞受賞、スイスのスタートアップ企業による最新のミセル化技術

サプリメントや薬のパッケージに表示されている有効成分。特にそれらが脂溶性栄養素であった場合、実にその25％程度しか体内に吸収されていないというデータがあります。

脂溶性栄養素とは、私たちが普段サプリメントなどでよく目にするコエンザイムＱ10やビタミンＡ、Ｄ、Ｅ、Ｋ、ウコンのクルクミンなどのことを指します。約60％が水でできている人間の体は、その細胞も水で覆われているため、まさに「水と油」となり、それら細胞に「脂」溶性の物質はなかなか吸収されません。

しかし、私たちの身体も黙ってはいません。例えば、バターやチーズを食べる時は、胆汁酸などが栄養素をミセル化（ナノ化）し吸収できるよう処理してくれています。ただし、その作業には膨大なエネルギーと時間が必要で、冒頭にあったように、体内に取り込んだもののうち約25％分程度しか処理が追いつきません。つまり、脂溶性栄養素はBioavailability（生物学的利用能）が低いということです。

Mivital社の技術は、この身体の作用を模しており、体内に取り込まれる前から脂溶性の栄養素をミセル化し、覆い、包み、そして擬似的に水溶性に変えてしまいます。そうすることで、あらゆる脂溶性栄養素のBioavailabilityを限りなく100％に高めることができます。

この技術を応用すれば、複数の栄養素をうまく混ぜて同時に取り込ませたり、これまで1日複数回飲んでいた薬の回数を減らしたり、さらには、長い苦痛を伴う抗がん注射を、簡単な飲み薬にかえることが可能になります。

Mivital社のミセル化技術は、従来のエマルジョンやリポソームと比較しても、温度耐性、pH耐性、メカニカル特性、引っ張り強度など、あらゆる面で圧倒的な安定化が可能な技術です。これにより、従来技術よりもさらにBioavailabilityを向上させることができます。

Mivital社の技術の新しさは、特に溶液濃度がCMCより低くてもミセルを安定化できることにあります。世界で初めて、CMCを10の何乗も下回る濃度でミセル化することが可能になりました。

これは、ミセルが細胞表面から洗い流されることなく、水、汗および細胞間液で希釈できることを意味し、ミセルを迅速かつほぼ完全に皮膚や粘膜を透過させることをも可能にしています。

Mivital社のミセル化技術は、理論上すべての脂溶性栄養素を細胞膜の中に、早く完璧に届けることができます。このドラッグデリバリー技術は栄養サプリメント業界だけでなく、製薬業界、コスメティック業界にも大きなイノベーションをもたらしつつあります。

すでに欧州市場では、栄養補助食品や美容業界において商品化がなされています。また北米市場でも、Nutra Nano Sphereでの共同開発実施や、X-Lab社やSolMic社での開発でも使用されています。

さらには、抗がん治療領域におけるインフュージョン注射を代替えできるような経口剤開発など、医薬品開発にも着手しています。